社長が多くの新しいアイデアや目標をお持ちであることは、会社にとってかけがえのない成長の源です。しかし、その貴重なエネルギーを最高の成果につなげるためには、何に集中するかを明確に決めることが非常に重要になります。
実行すべきことを整理し、「今はやらないこと」をはっきりさせることは、感情論ではなく、成果、効率、そして会社の成長を確実にするための実務的なメリットを生み出します。
1. 成果の最大化:一点集中で決定的な優位性を築く
多くのことに手を出そうとすると、労力や資金が分散してしまい、結果的にすべての取り組みが平均的な成果で終わってしまう危険性があります。
戦略的視点: 会社が最も達成したい目標は何でしょうか?その目標を圧倒的な成果で、誰よりも早く達成するには、リソースを最も効果的な一つのポイントに集中させることが必要です。すべてを「やりたい」と抱え込むと、プロジェクトの進み方が遅くなり、成果の力が弱まってしまいます。
具体的事例: A、B、Cという3つのプロジェクトに均等に力を分けるよりも、Aに集中的に80%の力を注ぎ込むことで、Aの分野で市場をリードできる可能性が高まります。「今はやらないこと」を決めるのは、この集中力を生み出すための重要な決断です。
2. 経営資源の効率的活用:社長の時間を「未来への投資」に集中させる
社長の時間は、会社にとって最も価値があり、代わりのきかない宝です。「やらないこと」を決めることで、その貴重な時間が本当に大切な活動だけに注がれるようになります。
時間活用の最適化: 「やりたいことリスト」のすべてに社長が関わることは、社長の時間を細切れにし、会社の未来を左右する本質的な判断をする時間を奪ってしまいます。「やらないこと」を明確にすれば、社長は「社長にしかできない仕事」、つまり未来への投資や重要な意思決定に、しっかりと集中できるまとまった時間を使えるようになります。
機会費用に基づく選択(最良の投資を選ぶ視点): 現在、時間や資金を注いでいる「やりたいこと」の中に、実は優先度の低いものが紛れていませんか?それに使っているリソースは、本当に重要な「別の成長のチャンス」に投資する機会を失っている(機会費用)と捉えることができます。優先度の低いものを「やらないこと」として手放すことは、最高の成長分野を選び取る戦略的な行為なのです。
3. 組織の集中力と生産性の向上:チームの迷いをなくす
社長の指示や関心が多岐にわたると、現場の社員は何を一番優先すべきか分からなくなり、組織全体の動きに迷いが生じます。これは、会社全体の力が落ちる原因となります。
方向性の統一: 社長が明確な一本の軸を示すことで、組織全体が同じ方向を向き、迷うことなく全力で行動できるようになります。社長の「あれもこれも」という姿勢は、現場から見ると「指示がブレている」と感じられ、組織のパワーが分散してしまいます。
具体的な効果: 「今年はこの2つに全集中する」と決定するだけで、社員はその2点に特化した知識やスキルを集中して磨き、短期間で高い専門性を身につけることができます。「やらないことリスト」は、社員の仕事の焦点を絞り、生産性を高めるための明確な指針となります。
4. まとめ
この考え方の目的は、「やりたいことを諦めてしまうこと」ではなく、「より少ない労力で、より大きなインパクトを出すこと」です。
まずは、今ある「やりたいことリスト」を、以下の2つの視点で評価し、整理することをご提案いたします。
1.達成したときのインパクトの大きさ
2.それを達成するためのリソース(時間・資金)の投入量
この分析に基づいて、『今すぐやるべきこと』と『今はやらないこと』を明確に仕分ける。この「やらないことリスト」こそが、社長の時間と会社の成長を最大化するための強力な防御壁となります。
