経営において利益とキャッシュ(現金)を明確に区別する必要性は非常に高いです。これは、両者が企業の財務状態を異なる側面から示しており、一方だけを見ていては企業の真の実態や短期的な存続能力を見誤る可能性があるからです。
1.利益とキャッシュの基本的な違い
2.区別する必要性(なぜ重要か)
利益とキャッシュの計上タイミングの違いなどから、以下のような状況が発生する可能性があり、そのために両者を区別して管理することが不可欠です。
①黒字倒産の回避
最も重要な理由の一つは、「黒字倒産」の防止です。
損益計算書上は利益(黒字)が出ていても、売上代金の回収(入金)が遅れたり、仕入れや経費の支払い(出金)が先行したりすることで、手元のキャッシュが不足し、資金がショートして倒産に至ることがあります。
利益は「会計上の概念」であり、キャッシュは「絶対的な事実」とも言われます。キャッシュの流れ(キャッシュフロー)を把握しなければ、企業は日々の支払いを続けることができません。
②資金繰りの正確な把握
利益の計算に含まれる減価償却費などの非現金費用は、実際には現金の支出を伴いません。逆に、設備投資による現金の支出や借入金の返済などは利益計算には反映されません。
利益とキャッシュの違いを区別することで、営業活動、投資活動、財務活動のそれぞれの分野で、どれだけの現金が増減したかを正確に把握でき、今後の資金計画を適切に立てられます。
③経営実態の総合的な評価
- 利益が高く、キャッシュフローも良好:理想的な状態であり、収益性と資金繰りの両面で安定しています。
- 利益は高いが、キャッシュフローが低い:売掛金(未回収の売上)や在庫の増加、または設備投資の増加などが考えられ、資金効率や回収体制に問題がないか分析が必要です。
- 利益は低いが、キャッシュフローが高い:減価償却費が多く計上されている、または資産の売却や借入金による一時的な収入があったなどが考えられ、長期的な収益性に注意が必要です。
3.まとめ
このように、利益は長期的な持続可能性を示し、キャッシュは短期的な存続能力を示すため、経営者はこの二つの指標を常に比較・分析することで、企業の財務状況をより包括的に評価し、適切な意思決定を行う必要があります。

