社員が会社を辞める主な理由は、「人間関係の不満」「評価への不公平感」「将来への不安」の3つです。これらを解消するために、高額な投資ではなく、経営者と管理職の「時間」と「意識」を投入する施策が非常に効果的です。
1.対話で社員の心を守る(コミュニケーションの改善)
社員が「この会社は自分を見てくれている」と感じられる環境を作ることが最も重要です。
定期的な個別面談(1on1)の仕組み化:上司と部下が、週に一度や月に一度など、短い時間でも仕事以外のことも含めてじっくり話す機会を持ちましょう。単なる業務報告ではなく、「最近、仕事で困っていることはないか」「将来、どうなりたいか」といった、個人の気持ちに寄り添って聞くことが大切です。これにより、社員の小さな不安や不満が大きくなる前に察知し、対処できます。
感謝と承認を「見える化」する:社員の頑張りや成果に対し、給与以外で感謝を伝える文化を作ります。例えば、朝礼で他の社員の功績を具体的に褒める、ちょっとした「ありがとうカード」を送り合うなど、ポジティブな言葉を交わす場を意識して設けます。人は認められることで、より会社への愛着を感じるようになります。
相談役となる先輩社員の配置(メンター制度):新しく入った社員や若手社員に対し、直属の上司とは別に、気楽に話せる先輩社員を相談役としてつけます。これにより、上司に言いにくい悩みも解消されやすくなり、新しい環境での孤立を防ぐことができます。
2.会社の「当たり前」を明確にする(評価とルールの透明化)
会社への不信感は、「何をすれば評価されるのかわからない」「給与が決まる基準が曖昧だ」といった不透明さから生じます。
評価基準を「言語化」して共有する:「頑張ったから」ではなく、「この行動や成果が具体的に評価につながる」という基準を明確に定めて全社員に伝えます。目標達成の基準が明確になると、社員は迷わず仕事に取り組め、評価結果にも納得しやすくなります。
将来のキャリアパスを示す:社員が「この会社にいたら、1年後、5年後どうなれるのか」という未来図を描けるようにします。昇進・昇格のルートや、必要なスキルを明確に提示することで、会社への期待感が生まれ、「ここで働き続けよう」という意欲につながります。
採用時の「正直な情報開示」:入社前に、仕事のやりがいだけでなく、大変な側面や厳しさも包み隠さず伝えるようにしましょう。これにより、入社後の「こんなはずじゃなかった」というミスマッチを防ぐことが、最も確実な離職防止策になります。
3.安心して働ける環境の提供
高額な福利厚生を導入しなくても、社員の生活に配慮した柔軟な姿勢を示すことが定着につながります。
柔軟な働き方を検討する:全社的な導入は難しくても、部署や個人の状況に応じて始業・終業時間を調整できる仕組み(時差出勤など)や、有給休暇を取りやすい雰囲気を作ることはすぐに実行できます。特に経営者や管理職が率先して休みを取る姿勢を見せることが重要です。
成長機会を社内で創出する:外部研修に頼らず、社内の知識や経験を共有します。例えば、高いスキルを持つ社員が講師となって社内勉強会を開く、業務に必要な書籍購入を少額補助するなど、自己成長を支援する姿勢を示すことが、社員のモチベーションを維持します。
4.まとめ
人材の定着には、高額な費用より経営者・管理職の「意識」と「時間」の投資が重要です。具体的には、対話(1on1)で不安を解消し心を守ること、評価やキャリアパスを明確にして不公平感をなくすこと、そして柔軟な働き方を認め成長を支援する姿勢を示すことが鍵となります。

